国際教養大学 ―若者には未来のために今自分は何をすべきなのかという問いに向き合ってほしい【ヒアリング】

本ページに掲載している内容は、2026年3月27日時点の情報です。

 東京都は、令和7年度、新たな価値や課題解決を創造し、日本や世界の成長・発展を牽引していく人材を輩出することを目的に、第一線で活躍するグローバルリーダーへのインタビューを中心とした調査を実施しました。 本記事では、調査報告書の中から国際教養大学を対象としたヒアリング内容をご紹介します。
 

INTERVIEW
公立大学法人 国際教養大学
副学長 熊谷 嘉隆

 

国際教養大学のロゴマーク

 

国際教養大学副学長熊谷嘉隆さん
OVERVIEW

本部所在地

秋田県秋田市

設立年

2004年

教員数

61人 ※2025年4月1日時点

学生数

920人(うち、大学院生61人) ※2025年4月1日時点

学部

国際教養学部

特色

・すべて英語の少人数授業
・1年間の留学義務(52の国・地域の210大学と提携)
・多文化共存のキャンパスライフ(4人に1人が留学生)
・多彩な可能性を広げる進路選択支援
・多様な人材を発掘する入試制度 
 ※2025年9月1日時点

 

「21世紀の松下村塾」として、
地方から日本や世界を支える次世代リーダーを輩出する。

貴学は2004年開学と比較的新しい大学ですが、開学の経緯と理念についてお聞かせください。

 開学に当たり、初代学長の中嶋嶺雄先生が掲げたのは、「21世紀の松下村塾を秋田につくりたい」という理念でした。松下村塾が山口から若き志士を育てたように、地方から日本、さらには世界を支える次世代のリーダーを輩出する―その思想が本学の根幹にあります。

 中嶋先生は、日本の学者が日本語で論文を書き、日本人にしか読まれず、研究が世界に認知されないという「日本の学界のガラパゴス化」に強い危機感を抱いていました。また、経済のみならず、さまざまな分野で日本の国際的プレゼンスが低下している状況にも強い問題意識を持っていました。

 こうした背景から、世界に向けた発信力を高めるため、国際共通語である英語を必修とする方針を採用しました。その結果、「全授業を英語で実施し、1年間の留学を必修化する」という教育システムが整えられました。これらは、ゼロから大学を設計できた本学だからこそ実現できた取組であり、既存の大規模大学では容易ではないと考えています。

 

― 貴学は「グローバルリーダーの育成」を掲げていますが、どのような人物像(能力・スキル)を想定しているのでしょうか?

 教育理念を一言で申し上げるなら、「単に頭の良い人間を育てるのではない」ということです。本学が目指すのは、高い知力に加え、胆力や責任感を備え、自らの利益だけでなく他者や地域のために尽くすことのできる「人格力」を持った人材です。

 いわゆる「ノブレス・オブリージュ」※1を体現できる人物でなければ、どれほど能力が高くても真のリーダーにはなれないと考えています。

※1 ノブレス・オブリージュ:高い能力や地位を持つ者には、それにふさわしい責任や社 会への貢献が求められるという考え方。

 

「知力」と「人格力」を備えたリーダーを育成するために、
リベラルアーツと学生の多様性を重視する。

貴学が重視されているリベラルアーツ教育についてお聞かせください。

 「知力」と「人格力」を育む教育として位置づけています。具体的には、多角的・多重的に物事を分析し、事象を地域的・時間的な文脈の中で理解できる人材を育成することを理念としています。

 例えば、現在ウクライナやガザで起きている問題を理解するには、その背景にある歴史を踏まえる必要があります。ニュースやSNSで流通する情報は断片的で、そこに振り回されていては正確な理解には至りません。だからこそ、事象の背後にある歴史を長期的時間軸でしっかりと学ぶ姿勢が欠かせないと考えています。

 さらに、気候変動や人口問題など、現代社会が直面する課題は単一の学問分野では解決できません。そのため、本学では物事を俯瞰的に捉える力を重視しています。多様な学問分野はすべて重要ですが、どれか一つを究めるだけではリーダーにはなれない―私たちはそのように考えています。本学のミッション、そして社会的役割は、こうした総合的視野を備えた人材を育てることにあります。

 

― 学生の多様性を重視される背景や意義について教えてください。

 大学が真にエクセレントであるためです。均質な環境はコンフォートゾーンとなり、刺激や緊張感を失います。異なる考え方、思想、宗教、言語を持つ人々と日常的に交流し、時に意見がぶつかることで、人は成長し、胆力や責任感が育まれると考えています。

 また、異質な人との触れ合いは、優れた研究の契機となるだけでなく、自らの視野を広げる上でも非常に有益です。よく言われることですが、学会でも最も刺激的な議論は、会議後の懇親会で生まれることが少なくありません。異分野の研究者や初めて出会う人々と自由に語り合える場だからです。

 こうした理念のもと、本学では16種類の入試制度や交換留学生の受け入れなどを通じて、意図的に多様性のある環境を創出しています。

 

必修の1年間の海外留学は厳しい「武者修行」。
困難を乗り越えた学生は大きく成長する。

― 貴学が提供する教育プログラムについて教えてください。

 本学の柱は、全授業を英語で実施すること、そして1年間の海外留学を必修としている点です。留学は、現在52の国・地域の210校と連携した授業料相互免除交換留学制度により、学生は本学の授業料のみで海外のトップスクールで専門科目を学ぶことができます。

 一方で、提携校から来日する学生は高額な授業料を負担しており、授業の質が低ければ本学に留学する意義が失われます。トップスクールから学生が来なくなれば交換留学制度自体が成り立たなくなるため、授業のクオリティ維持には常に細心の注意を払っています。

 

― 貴学が提供する海外留学プログラムについて教えてください。

 最大の特徴は、留学先で専門科目を学び、その単位が卒業単位として認定される点です。提携先のトップスクールで約30単位を取得する必要があるため、学生は高い学習意欲で取り組みます。

 また、本学は原則1大学につき1名を派遣するため、日本人同士で固まることはできません。異なる宗教観や文化、言語の中で、時に差別や偏見に直面しながらも独力で学ぶ環境は、まさに「武者修行」です。この経験を通じて胆力や責任感が養われ、学生は大きく成長し、「努力すれば道は開ける」という強い自信を得ることができます。

 

― 長期の海外留学を経験することの重要性についてお聞かせください。

 留学先で心が折れそうになったとき、短期留学であれば「もう少し我慢すれば終わる」という逃げ道が残ります。しかし、1年間の留学ではそうはいきません。学生は背水の陣で学業に向き合うことになり、これが長期と短期の決定的な違いです。

 さらに、留学先の文化や価値観、歴史、社会の空気を深く理解するには、最低でも1年間の滞在が必要です。長期留学は、単なる語学習得にとどまらず、世界を多面的に理解するための重要な基盤を築く経験だと考えています。

 

他者との共生を学ぶ「寮生活」は、
「たくましさ」や「人間力」を鍛える教育の場として重要。

留学先となっているのはどのような国・地域ですか?

 交換留学の行き先や来日する学生の出身国は、7~8割が欧米です。一方で、グローバルサウス※2の国々が持つ熱量や意思決定の速さ、リスクを恐れない姿勢は日本と大きく異なり、学生がその価値観に触れることも重要だと考えています。

 そのため、本学でもマレーシアやタイなど一部の国への留学先を充実させてきました。しかし、多くのグローバルサウスの大学では、現地の安全面や英語で履修できる科目の少なさといった課題があり、十分に拡大できていないのが現状です。

※2 グローバルサウス:先進国に対して、アジア・アフリカ・中南米などの発展途上国や新興国を指す言葉。

 

― 新入生に1年間の寮生活を義務付けていることも特徴的です。学生には寮生活の中で何を学ぶことを期待していますか?

 本学では新入生に1年間の寮生活を義務付けており、退寮後も約9割の学生がキャンパス内で生活を続けています。こうした生活環境を、教室と同等かそれ以上に重要な教育の場と位置づけています。

 国籍や文化、価値観の異なる学生が寝食を共にする環境には楽しさもありますが、時にはどんな相手とも折り合いをつけなければならない厳しさもあります。自分の「居心地の良い場所」に逃げ込めないからこそ、多様な他者と向き合い、相手の話を丁寧に聞く力や、問題を整理して対話で解決する力が育まれます。こうした経験が「たくましさ」や「人間力」を大きく伸ばすと考えています。

 実際には、ルームメイトとの関係に悩み、「もう無理です」と学生課に駆け込む学生もいます。しかし本学では、「それは君たちの問題だから、自分たちで解決しなさい」と伝えます。学生が自ら答えを見つけられると信じているからであり、人を育てるには、その信頼に基づく厳しさが欠かせないと考えています。

 

教室での学びを真の力に変えるには、
現実との往還とアウトプットが極めて重要。

― 教室の外での学びの重要性についてお聞かせください。

 教室での学びは、本学の教育の一部にすぎません。学生には常に「学びと現実を往還する姿勢」を身に付けるよう指導しています。教室で得た知識は、教員や仲間から刺激を受け、問題意識を深めるための出発点にすぎません。その後、学んだ内容を実社会で試し、例えば秋田という地域の中で実際に活用できるかを確かめることが、学びを自分のものにする上で極めて重要です。

 現場に出ると、教室で学んだ理論と現実とのズレが見えてきます。理論と現実は必ずしも一致しませんが、理論が無意味になるわけではありません。むしろ理論を基盤に現実を理解し、合わない部分は理論を更新していく必要があります。こうした「知のアップデート」の必要性を、現場での経験を通じて実感してほしいと考えています。

 加えて、現場で見聞きしたことは、必ず学生自身の言葉で言語化・文章化させるようにしています。教室でのインプット、現場での体験、そしてアウトプットを組み合わせることで、学びが真に血肉となります。

 

― 外部と連携して行っているプログラムについて教えてください。

 本学では、全国の中高生向けに「イングリッシュ・ビレッジ」というプログラムを実施しています。本学の学生が企画から指導までを担うもので、地域貢献であると同時に、責任ある立場で他者と関わることで学生自身が成長する、リーダーシップ教育の一環でもあります。

 参加する中高生は、少し年上の先輩が日本語と英語を自在に使いこなす姿に驚きますが、話を聞くと、その先輩も数年前までは英語が得意ではなかったと知ります。この気づきが、「人はきっかけ次第で大きく成長できる」という実感につながり、イングリッシュ・ビレッジの大きな魅力となっています。こうした学外への学びの機会を提供することも、公立大学としての本学の重要な役割だと考えています。

 

各国の大使や政府要人による講演・対話は、
学生が一流に触れ、強い刺激を受ける貴重な学び。

― その他に大学として力を入れて取り組んでいることはありますか?

 教室での学びに加え、学生の心を揺さぶるような経験を提供することは極めて重要だと考えています。私自身、アメリカの大学に在籍していた際、ノーベル賞受賞者やNASAの第一線の研究者が講演に訪れる環境に大きな刺激を受けました。本学でも「一流の人との出会い」を重視し、大学の責務として積極的に取り組んでいます。

 具体的には、毎年、各国の大使や政府要人を招き、講演や対話の機会を設けています。本学の特徴的なところは、こちらから依頼するだけでなく、むしろ先方から「ぜひ話をしたい」と申し出をいただくことが多い点です。最近では、阿部俊子文部科学大臣(当時)、河野太郎デジタル大臣(当時)、EU、フィンランド、ウクライナ、セルビアなどの大使が来訪し、学生にとって大きな刺激となりました。

  本学では講演後に必ず質疑応答の時間を設けていますが、学生たちは英語で次々と質問し、その勢いに大使の方々も驚かれます。「他の日本の大学では質問がほとんど出ないのに、ここでは質問が止まらない」と言われることも多く、一度来られた方が再訪を希望される理由にもなっています。

 若いうちに一流を知ることは非常に重要です。最初から一流に触れることで、そのレベルの高さを理解し、二流・三流との違いが明確に見えてきます。さらに、本学では一流の人の話をただ聞くだけでなく、議論や意見交換まで行います。その場にはできるだけ大人が介在せず、若者が自由に交流できるようにしています。こうした主体的に一流の人と触れ合う経験こそが、学生にとってかけがえのない学びになると考えています。

 

近年、海外経験を持つ学生が増加。
国際課題への関心の高さには目を見張るものがある。

― 今後、強化していきたい教育プログラムがあれば教えてください。

 本学では研究活動を研究室単位ではなく教員個人に委ねていますが、より多くの学生が教員の研究に関わることができる仕組みや支援を整えていく必要があると考えています。これは学生に「学びと現実の往還」を促す機会の拡充にもつながり、教員と共に現場で研究することで「知らないことを知る喜び」を実感してほしいという思いがあります。単なる助手ではなく、教員と学生が共に汗をかき、共に考える文化をさらに根づかせたいと考えています。

 そのためには、教員側のマインドセットの転換も不可欠です。私自身もそうですが、「研究アシスタントは大学院生」という固定観念があり、学部生への任せ方に不安を抱きがちです。しかし、実際に大学1年生をリサーチアシスタントとして採用してみると、機会さえ与えれば学生は確実に成長します。最初はうまくいかなくても、慎重に、しかし思い切ってハードルを上げていけば、若者は自ら能力を伸ばしていきます。だからこそ、信じて任せることが教員の責務だと考えています。

 

― 貴学の学生は国際的志向が強い印象がありますが、共通して見られる経験や特徴についてお聞かせください。

 近年、幼少期に何らかの海外経験を持つ学生が増えています。例えば、グローバルサウスを訪れ、貧困の現実を目の当たりにしたことで日本との違いに衝撃を受け、「世界は広い」という認識を持って入学してくる学生が見られます。

 こうした学生は、「世界で活躍したい」という明確なキャリア志向よりも、「国際課題への関心や理解を深めたい」という姿勢を重視する傾向があります。実際、卒業後すぐに外資系企業へ進む学生は多くありませんが、日系企業に就職した後に海外で活躍する卒業生は相当数に上ります。

 

根気よく情報を集める「忍耐力」の欠如が学生の課題。
断片的ではなく体系的な情報収集こそが知識になる。

― 最近の若者にはどのような特長があるとお考えですか?

 現在の若者は、我々の世代と比べて世界に関する知識や問題意識が格段に高く、幅広い情報にアンテナを張り、アクセスしていると感じます。印象的な例として、入試面接でのある生徒の発言があります。

 その生徒はインドでカースト制度を目の当たりにし、当初は批判的に捉えていたものの、現地の貧しい人々と対話する中で、彼らが誇りを持って生活していることを知り、「援助する」という視点そのものを見直す必要があると気づいたと語りました。開発援助の難しさを理解する貴重な経験だったそうです。

 このように、高校生や大学生の段階でここまで深く考えているのかと驚かされる場面が多くあります。背景には、情報量の増加や、海外経験の機会が我々の世代よりもはるかに多いことが影響していると考えています。

 

― 一方で、課題や不足を感じられる点があればお聞かせください。

 本学には優秀な学生が多く集まっていますが、あえて挙げるとすれば「忍耐力」です。本学では、4年間でリーダーを育成できるとは考えていません。大学で学ぶのは「学び方」であり、自ら成長するための基礎力です。その一つが、信頼できる情報を集め、さまざまな文脈で検証する力です。

 しかし、この作業には根気が求められます。現在は検索すれば瞬時に情報が得られますが、以前は図書館で時間をかけて本を探し、関連資料に触れることで知識を広げていました。今は「検索すればすぐ分かる」と錯覚しやすく、効率性を過度に追求する傾向が見られます。

 私は学生に対し、「泥臭い作業こそ君たちの核になる。腰を据えてじっくり学びなさい」と伝えています。SNSやインターネットで断片的な情報を集めても、それは知識や知恵にはなりません。情報の背景やつながりを理解し、体系化するプロセスを経て初めて知識や知恵になります。このプロセスを「面倒だ」と感じる学生が増えていることを危惧しています。これは本学に限らず、世界中の若者に共通する課題だと考えています。

 

若者がコンフォートゾーンから出て視野を広げるため、
社会全体で次世代を育てる文化を醸成することが必要。

―   世界に羽ばたき活躍する若者を増やすための育成上の課題と必要なサポートについて、どのようにお考えですか?

 テレビ番組などで「日本はすごい」「日本のここが優れている」といった内容が必要以上に溢れているように感じます。こうした情報は、若い世代が外に出ることなく「やっぱり日本はいい」と自己完結してしまうメンタリティを助長しているのではないかと危惧しています。

 現在はSNSのフィルターバブルによって、興味を持った情報と同質のものばかりが流れてくる仕組みになっています。その結果、世界の現状を知らず、関心を持たないまま「日本は日本」という意識にとどまり、日本が国際社会で取り残されていく状況が進んでいるように感じます。

 こうした意識を変えるには、コンフォートゾーンの外に出る経験が不可欠です。海外渡航はもちろん、日本国内で異なる地域に身を置くことでも構いません。しかし、学校教育だけでその機会を十分に提供するには限界があります。近年はリスク管理の厳格化により、学校側も慎重になりがちです。

 この課題を解決するには、行政による支援も含め、社会全体で次世代を育てる文化を醸成する必要があります。奨学金などの制度のハードルを下げ、これまで機会に恵まれなかった子供たちにこそ積極的に機会を提供することが重要です。現状では、海外経験を得られる層とそうでない層の格差が依然として大きく存在しています。

 さらに、親のマインドセットも大きな要素です。本学の学生を見ていると、親との信頼関係がしっかり築かれている家庭の若者ほど、思い切った挑戦をしている印象があります。親が手綱を握りつつも、どれだけ子供を信じて自由にさせられるかが重要です。逆に、幼少期から塾通いを続け、進学校や有名大学への進学を人生前半の目的とするような環境では、コンフォートゾーンに安住する若者しか育たないのではないかと考えています。

 

時代を超え世界で読み継がれる書物を読み、
人間社会における普遍性を学んでほしい。

― 学生が若いうちに経験しておくべきことがあれば教えてください。

 やはり、コンフォートゾーンを意識的に抜け出す経験は、できる限り積んでおくべきだと考えています。さらに、読書を通じて自分の知らない世界に触れることも同様に重要です。本学の学生には、「SNSでどうでもいい情報を追う時間があるなら、本を読みなさい」と繰り返し伝えています。

 新入生向けのレクチャーでは、必読書としてプラトンの『国家』、トルストイの『戦争と平和』、ゲーテの『ファウスト』などを紹介しています。こうした、時代や地域、文化を超えて読み継がれてきた書物には、人間や社会の普遍性が刻まれています。個々の出来事を「面白い」「楽しい」といった感覚だけで捉えるのではなく、より深い判断軸を持つためにも、普遍的な価値観に触れることが大切だと考えています。

 

― 日本の教育について、課題と感じている点はありますか?

 まず、いわゆる進学校における教育の在り方は、抜本的な見直しが必要であり、今後の日本にとって大きな課題になると感じています。高校の現場でも、受験中心の教育が本当に将来の日本を支える人材育成につながっているのかという点について、強い問題意識を持っているのが実情です。しかし、改革に踏み出せず、立ち止まってしまっている状況が続いています。この問題について、自治体や教育委員会がどこまで本気で議論を深められるかが問われており、決して容易な課題ではありません。

 また、日本の大学教育については、アウトプット力を鍛える取組が著しく弱いと感じています。「控えめであること」や「場の空気を読んで自らを律すること」は確かに美徳ですが、伝えるべきことを分かりやすく伝える力も不可欠です。単に一方的に話すのではなく、相手の意見を聞きつつ自分の考えをぶつけ、どのように折り合いをつけていくか―こうした議論を通じて合意形成を図る力は、学校教育でも社会人教育でも、より一層強化していく必要があると考えています。

 

次代を担う若者には自信と自覚を。
それを育むのは大人の責任である。

―   若者が世界で活躍するためには、日本社会はどのように変わる必要があるとお考えですか?

 「自分が変われば、多くのことを変えられる」という自信を持てる社会であることが重要だと考えています。現状では、「何をやっても駄目だ」という諦めの空気が広がっているように感じます。自ら学び、鍛えることで、世の中をより良い方向へ変えられる、そして自分自身も成長できるという、ある種の楽観的な雰囲気が社会全体で弱まっていることを危惧しています。

 この状況を改善するためには、家族、地域、学校、そして何より大人が、若者に対して前向きなメッセージを発信し続けることが不可欠です。社会全体が少しずつでも変わっていく以外に道はありません。子供を取り巻く大人には、行政、家庭、学校、NPOなど多様な主体が存在しますが、互いに役割を押し付け合い、気づけば誰も担っていなかったという事態を避けるためにも、私たち大人が責任を持って考え、行動する必要があります。

 

―   若者に期待することやメッセージをお願いします。

 次の時代、次の日本、そして次のアジアを動かしていくのは、紛れもなく皆さん自身です。その未来を目前にして、今自分は何をしようとしているのか、何をすべきなのか―その問いに真剣に向き合ってほしいと思います。

国際教養大学の図書館

24時間365日開館の図書館は、学生がいつでも学びに没頭できる「知の闘技場」。

記事ID:111-001-20260701-013123