來海潤一郎さん ―高校時代に「もやもや」を行動に変えたことが原体験【ヒアリング】

 本ページに掲載している内容は、2026年3月27日時点の情報です。

 東京都は、令和7年度、新たな価値や課題解決を創造し、日本や世界の成長・発展を牽引していく人材を輩出することを目的に、第一線で活躍するグローバルリーダーへのインタビューを中心とした調査を実施しました。 本記事では、調査報告書の中から來海潤一郎さんへのヒアリング内容をご紹介します。

INTERVIEW
來海潤一郎さん
PROFILE

慶應義塾大学 総合政策学部 來海 潤一郎

 学業と並行して、Z世代の視点から企業や社会の未来を考え、持続可能な社会の実現に向けて活動。2019年、ユーグレナ社初代のCFO(Chief Future Officer:最高未来責任者)と共に活動を行うFutureサミットメンバーに選出。未来をつくる実験区「100BANCH」の立上げと運営に携わる。2021年、日本経済新聞社「日経ソーシャルビジネスコンテスト」ファイナリスト選出。2024年2月よりユーグレナ社「未来世代アドバイザリーボード」メンバーとして活動。

CAREER
 
 
2003年
生まれる
 
2022年
渋谷教育学園渋谷高等学校卒業
慶應義塾大学総合政策学部入学

 

座学と実践、二つの軸で未来を探る。
目的や自分の役割を意識して取り組むことが大切。

― 現在、大学内外でどのような活動に取り組んでいますか?

 現在、慶應義塾大学総合政策学部において、経営戦略と脱炭素に関する学びを中心に取り組んでいます。その過程で、過去には一度休学し、父が経営する会社を手伝った経験もあります。というのも、経営戦略を学ぶ上で、教室で得られる知識だけでは実際のビジネス現場と完全には重ならないと感じたからです。実務を通じて現場の感覚を身に付けたことは、自分にとって非常に貴重な経験になりました。

 また、2024年は株式会社ユーグレナが設置する「未来世代アドバイザリーボード」の一員としても活動しました。主な活動内容は、企画会議への参加に加え、小中高生や大学生を対象とした出張授業の実施です。授業では「社会を切り取る」というテーマを掲げ、「まずは身近な小さな課題を見つけ、それを解決し、フィードバックを受けるというサイクルを体験してほしい」と伝えています。その際には、対象となる学年に応じて考え方や視点を調整しながら教えるようにしました。

 

― さまざまな活動をする中で、どのような学びや気づきがありましたか?

 大学入学後に参加したインターンシップの経験を通じて、物事の根幹を探ることの重要性に気づきました。単に目の前のタスクをこなすだけでは、自分自身の成長にはつながらないと感じ、「この業務は何のために存在しているのか」「自分はプロジェクトの中でどのような役割を担っているのか」と考えるようになりました。そうした視点を持つことで、プロジェクトを前に進めるためにどのような工夫ができるかを意識できるようになっていきました。

 振り返ってみると、成果が上がった時には、無意識のうちにでも最も重要な目的を捉えられており、逆にうまくいかなかったときにはその目的を見失っていたように思います。この気づきは、後に取り組んだユーグレナでの活動や出張授業の企画にも活かされました。授業ではまず「何を伝えたいのか」というキーメッセージを明確にし、それを分解して構成していくというプロセスを、意識的に実践することができました。

 

高校生の時に身近な「もやもや」を行動に変え、
自分たちの提言で会社を動かしたことが原体験。

― ユーグレナ社の「フューチャーサミット」での活動について詳しく教えてください。

 「フューチャーサミット」は、18歳以下の中高生が集まり、企業のサステナビリティ方針について提言を行う取組です。私たちのチームは、プラスチック製品の全廃やCO2排出量の50%削減といった具体的なプランを検討し、取締役会にてプレゼンテーションを行いました。

 その提案は最終的に可決され、実際に施策として実行されました。自分たちの意見が企業の意思決定に反映され、社会に影響を与えたという実感は、大きな成功体験となりました。そのスピード感や、意見が採用されるという手応えは、自分自身の成長にもつながったと感じています。

 

― フューチャーサミットに応募したきっかけは何ですか?

 高校1年の時、学校の授業で「AIと人間の共存」についてディスカッションを行う機会がありました。周囲の生徒が熱心に議論する様子を見て、せっかくの意見が世の中に発信されることなく、内容が的を射ているかどうかも分からないまま終わってしまうのは非常にもったいないと感じました。そこで、若者の意見が社会に届き、フィードバックが得られる仕組みがあれば良いのではないかと考えたのです。

 その2週間後、偶然新聞広告でフューチャーサミットの公募を見つけ、この考えをぜひ知ってもらいたいと思い応募しました。幸運にも面接の機会をいただき、面接官の方とお話をすることができました。そこで、自分の意見は間違っているわけではないものの、社会的な制約やハードルが存在することを知ることができました。合否にはこだわっていませんでしたが、結果としてフューチャーサミットのメンバーに採用していただき、その後の活動へとつながっていきました。

 自分の中にあった「もやっとした感情」を具体的なアクションへとつなげられたことは、個人的にはファインプレーだったと感じています。「もっとこうだったらいいな」という思いに対して行動を起こし、成功体験を得ることは、その後の人生で新たなチャレンジに踏み出すきっかけになると考えています。

 

行動を起こす前から結果を過度に気にする必要はない。
一歩を踏み出すときには、計画性よりもやり遂げる力が重要。

― 行動を起こすために必要なことは何ですか?

 新しいことに挑戦する際には、失敗に対する抵抗がないことが非常に大切だと思います。失敗を恐れない姿勢は、私自身も含め、今の若い世代にとって不足しがちな能力ではないでしょうか。昨今はSNSや生成AIの普及により、行動を起こす前から結果を過度に気にしてしまう傾向があります。もちろん計画性が重要な場面もありますが、新しい一歩を踏み出すときには、成功するかどうかを過度に気にする必要はないと考えています。

 私自身、多くの失敗を経験してきたこともあり、失敗に対する抵抗が比較的少なく、気軽に一歩を踏み出すことができました。もし緻密な計画だけで成功が保証されるのであれば、世の中に失敗する人はいないはずです。完璧なビジネスプランを立てても、新型コロナウイルスや戦争のような予期せぬ出来事によって失敗に終わることもあります。こうした不確実性の高い時代においては、計画性以上に「めげない力」や「やり遂げる力」が重要だと感じています。

 

― 活動を進める上で、ご両親や周囲からはどのようなサポートがありましたか?

 両親からは「こう生きなければならない」といったことを言われたことはなく、小さい頃から比較的自由にさせてもらっていました。学校も課外活動に理解があり、先生方はエントリーシートの添削やディスカッションの相手など、親身になってサポートしてくださいました。

 さらに、社会問題に全く関心のない友人たちの存在も、結果的に非常にありがたいものでした。活動にのめり込むと、周囲には社会問題に関心を持つ人ばかりが集まりがちですが、ふと友人たちのことを思い浮かべることで「こうした人たちに関心を持ってもらう必要がある」という使命感が芽生えました。友人たちの存在は、活動の方向性を見直す上でもプラスに働いたと感じています。

 

世界で活躍するためには、自らの目的を明確にし、
それを原動力として挑戦を続けることが重要。

― 世界で活躍するために必要な能力・スキルは何だとお考えですか?

 世界で活躍するためには、圧倒的な原動力が必要だと考えています。世界で活躍するトップ経営者やスポーツ選手の多くは、困難な経験や逆境を乗り越えてきており、それが強い原動力につながっているように感じます。

 一方、日本は平和で豊かであり、価値観の衝突も起こりにくいため、そうした強い原体験を持つ人は少ないのが現状です。その結果として、原動力の熱量に差が生じてしまうことは避けられません。

 そのような環境の中でリーダーシップを発揮するためには、「自分はなぜこの問題を解決したいのか」という明確な軸を持つことが不可欠です。この軸がなければ、問題の大きさや周囲の熱意に圧倒され、途中で挫折してしまうでしょう。だからこそ、自分自身の動機や目的をしっかりと見つめ直し、それを原動力として行動していくことが重要だと考えています。

 

― 留学など、海外で学ぶことの重要性について、どのようにお考えですか?

 海外に出て、日本を外から相対的に捉えることは非常に有効な手段の一つだと思います。ただし、それ以上に重要なのは、留学に行く本人が「なぜ留学に行くのか」という目的を明確にしておくことです。

 海外に出ると、日本との違いがあまりにも多く、ただ「なんだか全然違ったな」という感想だけで終わってしまう可能性があります。そうならないためには、留学にどのような意味を持たせるのか、自分自身の何を変化させたいのかを事前に考えておく必要があります。

 例えば、人間関係や社会の仕組みなど、テーマを絞って注視し続けることで、得られる学びの解像度は高まります。目的が曖昧なままでは、せっかくの経験が十分に活かされない可能性があります。だからこそ、留学においては目的設定が何よりも重要だと考えています。

 

さまざまな経験を通じて当事者意識を育み、
自分の人生の方向性を見つけていってほしい。

― 若者に対し、どのようなサポートが必要と考えますか?

 近年、留学をはじめとした若者の活動に対する支援の輪は広がってきていると感じています。その一方で、いくつかの懸念もあります。

 一つは、インターンやプログラム等を通じて学生のアイデアが搾取されてしまうケースがあることです。斬新な発想が活用される一方、十分な評価や還元がなされていない場面が見受けられます。

 もう一つの課題は、大人が若者に対して優しすぎることです。中高生の提案に対して肯定的な反応だけで終わるのではなく、一人の社会人として向き合い、リアルな世界の厳しさも含めて伝えることが重要だと思います。的確なフィードバックを通じてこそ、若者は本当に認められていると感じ、挑戦への意識が高まるのではないでしょうか。

 

― 同世代の若者や後輩へのメッセージをお願いします。

 私が講演でよく小学生に伝えているのは、「他の子と比べるのではなく、昨日の自分を超えよう」ということです。それと「これはできるかもしれない」と思ったら、失敗しても構わないので、「まずは一度やってみよう」ということです。中高生には「自分の中の正解を今決めるのはまだ早い」と伝えています。まずはさまざまな経験を通じて多様な価値観に触れ、自分の価値観を柔軟に変えていってほしいと思います。

 今日では成功した人の姿が広く発信され、成功パターンが固定化されてしまいがちです。しかし、人生における成功は一つに限定されるものではありません。まずは挑戦し、その経験を通じて自分の人生の方向性を見つけていってほしいです。

 そして、自分の人生を「自分が生きている」という実感、つまり当事者意識を強く持ってほしいと思います。この感覚が育まれることで、自分自身と向き合い「何をすべきか」を考えるようになり、その先に初めて「一歩踏み出してみよう」という気持ちが生まれてくるのだと思います。

 

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