小山真生さんから若者へのメッセージ―「小さな挑戦でも自ら飛び込んでみる」 【インタビュー】

 本ページに掲載している内容は、2026年3月27日時点の情報です。

 東京都は、令和7年度、新たな価値や課題解決を創造し、日本や世界の成長・発展を牽引していく人材を輩出することを目的に、第一線で活躍するグローバルリーダーへのインタビューを中心とした調査を実施しました。 本記事では、調査報告書の中から小山真生さんへのインタビュー内容をご紹介します。

INTERVIEW
小山真生さん
PROFILE

米国三菱商事会社 シニアバイスプレジデント 小山 真生

 2010年に三菱商事に入社後、豪州駐在等を経て、2018年より脱炭素技術関連の新規事業開発に着手。経済産業省「カーボンニュートラル※1の実現に向けたカーボン・クレジット※2の適切な活用のための環境整備に関する検討会」に委員として参加。2024年、世界経済フォーラムの「Young Global Leaders」に選出。2025年から米国三菱商事にてAI関連の新規事業開発に着手。

※1 カーボンニュートラル:温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させ、実質ゼロにすること。
※2 カーボンクレジット:温室効果ガスの排出削減量や吸収量を証書化し、企業や団体が売買できる仕組み。

CAREER
 
 
1985年
生まれる
 
2004年
東海高等学校卒業
東京大学入学
 
2008年
東京大学工学部卒業
 
2010年
東京大学大学院技術経営戦略学専攻修士課程修了
三菱商事株式会社入社
 
2015年
ニューサウスウェールズ大学鉱山工学専攻修士課程修了
 
2021年
国「カーボンニュートラルの実現に向けたカーボン・クレジットの適切な活用のための環境整備に関する検討会」委員(~24年)
 
2025年
米国三菱商事会社シニアバイスプレジデント、シアトル支店長

 

世の中と子供たちの未来のために、
最先端のAI都市シアトルから日本を元気にする。

― 現在取り組まれていることを教えてください。

 私が活動しているアメリカ・シアトルには、MicrosoftやAmazonといった世界的企業が集積しており、AIの一大拠点を形成しています。そのような環境の中で、AIを産業にどのように活用し、新たなビジネスを創出していくかという課題に取り組んでいます。

 ChatGPTをはじめとするAI技術は、既にさまざまな場面で活用が進みつつあります。今後はエネルギーや製造業など幅広い産業分野において、さらに加速していくと見込まれます。現在、当社が展開する各種ビジネスに対し、どのようにAIを導入すべきか、検討を重ねているところです。

 

― 今後、実現したいことや、将来のビジョンがあれば教えてください。

 三菱商事には、創立以来の企業理念である「三綱領」※3をもとに、単なる利益追求にとどまらず、「世の中のために」という視点で企業活動を推進するカルチャーが根付いています。私自身も、中高時代のサッカー部顧問から「生まれてきたからには、世の中を一歩でも前進させることをしなさい」と教えられた経験があり、「社会をより良くしたい」という想いを常に抱いています。

 一方で、世界における日本の競争力低下に強い危機感を持っています。AIという大きな潮流の中で、日本がいかに国際的なプレゼンスを発揮していくのか。三菱商事として、そして日本企業としてどのように生き残っていくのかは、日本の国益にも深く関わる重要なテーマです。世の中や子供たちの未来のために、企業として国際競争力を高め、日本の国益や豊かな社会の実現に貢献していきたいと考えています。

※3 三綱領:三菱グループの企業理念。「所期奉公」「処事光明」「立業貿易」。

 

自由にさせてくれた両親のもと、自発性を伸ばした。
幼少期の学びは「枠にとらわれない」こと。

― どのような家庭で育ちましたか?

 両親は比較的自由に私を育ててくれました。これまで「勉強しろ」と言われたことはなかったと思います。むしろ夜遅くまで勉強していると「テストの点が悪くてもいいから、早く寝なさい」と促されるほどでした。人間は追われると逃げますが、放っておかれると追いかけるもので、結果としてそのような環境は私にとって良かったと感じています。

 また、父は「私はこう思う」という信念を貫く人で、私の考え方や行動にも大きな影響を与えています。社会人になる頃、父から言われた言葉で今も記憶に残っているものが二つあります。一つは「人付き合いを大切にしなさい」ということです。父は画廊を経営し、人脈を基盤に商売をしていたため、私の人付き合いを重んじる姿勢は父譲りかもしれません。もう一つは「仕事に当事者意識を持ちなさい」という言葉です。父は「私は自分と家族の命のために仕事をしている。会社員としてハンコを押すときは、それくらいの意識を持ちなさい」と語っており、この言葉は今も私の心に刻まれています。

 

― どのような幼少期を過ごされましたか?

 幼少期から、何事にも主体的に取り組む性格でした。小学校の授業参観では、野球でピッチャーを務めながら、自ら打った球を自分で拾いに行くなど、何でも自分でやってしまい、母から「恥ずかしかった」と言われたほどです。

幼少期の小山さん

幼少期の小山さん

 また、小学校低学年までは週に数回、ドルトンスクールに通っていました。一人ひとりの興味を出発点に自主性と創造性を育むという、そのスクールの授業や考え方が好きでした。特に印象に残っているのは、「3×3の9つの点を一筆書きで4本の直線で結ぶ」という問題です。9つの点が作る四角の枠内で線を引こうとしても解けず、枠を飛び越えて線を引くと解けるというものです。この問題の教訓は「既存の枠組みにとらわれてはいけない」というもので、私にとって非常に画期的な体験でした。ドルトンスクールでの経験は、私のマインドセットにも影響しているかもしれません。

9つの点を4本の直線で結ぶ問題

9つの点を4本の直線で結ぶ問題

 

小さなきっかけが海外ホームステイにつながり、
「海外へのまなざし」が生まれた。

― 中高時代にイギリスとアメリカへ短期ホームステイをされたとお伺いしました。

 中学生の時はイギリス・バーミンガムで、高校生の時にはシアトルで、それぞれ数週間のホームステイを経験しました。一人で飛行機に乗り海外へ渡航するのは初めてで、ロンドンのヒースロー空港で多様な人種の人々を目にした時、その光景に圧倒されたことを覚えています。

 現地では、ホームステイ先の子供と一緒に学校に通いましたが、イギリス人、中国人、インド人がそれぞれのグループで固まっており、人種間の見えない壁を感じました。特別な出来事があったわけではありませんでしたが、「海外に行った」という経験そのものが、私にとって大きな財産となりました。

 私の両親は全く英語を話せず、家族で海外旅行をしたことも一度もありませんでした。もしこのホームステイの経験がなければ、私自身に「海外へのまなざし」は生まれなかったかもしれません。

 

― ホームステイに行ったきっかけは何でしたか?

 中学生の時に通っていた英語塾の影響が大きかったと思います。そこにいた友人のお兄さんが幼い頃からイギリスに留学していたこともあり、その影響で「行きたい」という気持ちが芽生えました。偶然にもそのようなきっかけを得られたことは、とても幸運だったと思います。

 

賢さを磨き、信頼を築き、最後までやり抜く力が、
人生を前へと進める原動力となる。

― その他に、中高時代で、ご自身に影響があった体験はありますか?

 中高時代に所属していたサッカー部での経験は、私にとって非常に大きなものでした。決して強豪校ではありませんでしたが、私たちの代は県大会で準優勝を果たすほどの力があり、その時の仲間とは現在も交流が続いています。また、顧問の先生には今でもお世話になっています。先生はサッカーの専門的な知識を持っていたわけではありませんが、その分、人生に役立つ教育的なお話をよくしてくださいました。

 特に印象に残っているのは、先生が繰り返し語っていた、人生に大事な三つの教えです。それは「賢くあること、人に信頼されること、そして最後までやり抜くこと」でした。賢さとは、目標達成に向けて最短の道筋を考える力。信頼とは、失うのは容易である一方、地道に築き上げるべきもの。そして、心身を鍛え、最後まで実行する力を身に付けなければならない、という教えでした。この言葉は、今でも私の人生の礎となっています。

 

― 大学や大学院ではどのようなことを学びましたか?

 大学は父の影響もあり、理系に進学しました。当初はサッカーが好きだったことから、漠然と選手の代理人のような仕事に憧れ、法学部への進学を考えていました。しかし父から「文系ではなく理系に行け」と言われ、理系の道を選びました。結果的に、この選択は正しかったと思っています。

 特に大学院での学びは、今でも大いに活かされています。私は工学部の上に設置された技術経営戦略学専攻(TMI)に進学しました。AI研究で著名な松尾豊先生が在籍するなど、人気の専攻であったため入試は厳しく、優秀で個性的な人材が数多く集まっていました。

 大学院では毎週のように仲間とグループワークでケーススタディに取り組み、プレゼンテーションを行いました。発言しなければ評価されないという、アメリカのビジネススクールに近い授業スタイルはとても刺激的でした。そこで培ったディスカッションやプレゼンテーションのスキルは、自分自身の大きな財産となっています。当時の仲間とは今でも交流が続いており、学びの場で築いた関係が今も私を支えてくれています。

 

オーストラリアで海外のマインドセットを学ぶも、
海外で「友人関係」を築くことの難しさを知る。

― 就職先として総合商社を選んだ理由を教えてください。

 大学院時代、研究室の先生から大きな影響を受けました。先生は「日本はハードには強いが、ソフトが弱い」と指摘されていました。日本が半導体や液晶パネルを開発しても、量産の段階になると海外に移ってしまう。日本はPCまでは作れるものの、業界で真に利益を得ているのはGoogleやMicrosoftといったソフトウェア企業である、と。日本人はプロダクトイノベーションには強みを持つ一方、ビジネスモデルやソフトウェアのイノベーションには弱い。そうした中で、唯一その両方を担える可能性がある日本企業は総合商社ではないか―この先生の言葉に強く感銘を受けました。

 さらに、「こんなに楽しい仕事をしている」と誇りを持って語る優秀な先輩方が商社に多かったことも、私の進路を決める大きな要因となりました。

 

― 入社後、オーストラリアに駐在し、現地の大学院でも学ばれていますが、これはどのような経験でしたか?

 オーストラリアには5年間滞在しました。まず、社内制度を活用し、ニューサウスウェールズ大学大学院に1年間通いました。長期の海外活動経験がなかったため、日本人以外のコミュニティに一人で飛び込み、海外のマインドセットの中で過ごしてみたいと考えていました。その希望が叶い、大学院で学ぶ機会を得ることができました。

 卒業後は1年間、鉱山の現場に張り付きました。屈強なオーストラリア人たちと日々渡り合えたことは、自分にとって非常に貴重な経験となりました。

 ただし、結果として現地で腹を割って語り合える親友をつくるまでには至りませんでした。同じように駐在していた日本人の友人がいたため、そのコミュニティに安住してしまったのです。それ自体は楽しく、ポジティブな経験ではありましたが、言語や文化の壁を越え、ゼロから本当の友人関係を築くことの難しさは、今でも強く感じています。

 

世界基準の競争環境で磨いた視点と、
困難に挑み続ける粘り強さで、脱炭素ビジネスを切り拓いた。

― キャリアの初期は鉱物資源分野で活躍され、2018年頃からカーボンニュートラルの領域に舵を切られています。

 オーストラリア駐在時の最後の3年間は、現地の投資部門に所属していました。その頃、パートナーである資源メジャーが脱炭素の潮流を受け、石炭資産の売却を開始しました。その動きを目の当たりにし、「これは本物のトレンドだ」と肌で感じたのです。そして、2018年に帰国した際、この脱炭素の潮流に乗った事業を推進すべきだと考え、カーボンニュートラル関連ビジネスを立ち上げました。

 所属していた部署は自由度が高く、他部署の同期と連携しながら活動を進めていたところ、上司の目に留まり、専任チームが発足。そこから取組が加速し、海外企業との合弁事業を立ち上げたり、経済産業省の委員会メンバーに選出されるなど、自分にとっては大きな成功体験となっています。

 また、金属資源グループに配属されたことは非常に幸運でした。資源事業は当社の強みであり、世界のトップを争う事業です。グローバルなトップ企業と戦うのが当たり前で、サッカーに例えるなら「ワールドカップ優勝を目指す」レベルが基準となる環境です。このような場で仕事をする機会をいただけたからこそ、世界基準の視点を持つことができました。

 

― グローバル事業の立上げに際し、困難な状況もあったかと思います。どのように乗り越えてきましたか?

 「ひたすら頑張るしかない」。結局のところ、その一言に尽きるのではないでしょうか。母からよく言われた「死ぬわけではないんだから」という言葉を胸に、困難な状況でも最後まで諦めずに仲間と協力し、粘り強く取り組む姿勢を大切にしてきました。

 

必要な能力は、関係構築の前提となる「英語力」と、
行動し、失敗から学び成功につなげる「マインドセット」。

― グローバルリーダーに必要な能力・スキルは何だとお考えですか?

 まず、「英語を話せること」が大前提だと感じています。その上で、自分の考えや想いを的確に伝える発信力、そして粘り強さが重要です。AIの進化によって将来的に状況が変化する可能性はありますが、直接対話ができなければ深い信頼関係を築くことは難しいでしょう。特にアメリカでは、日本人が想像する以上に人間関係を重視し、「本当の関係を築くには、仕事相手を家に招き、家族ぐるみで付き合わなければならない」とよく言われます。私自身、そのレベルの関係構築力はまだ十分に身に付けられていないため、今後の課題だと捉えています。

 一方で、グローバルに戦うことを考えると、海外の人と日本人とではそもそものマインドセットが異なっていると感じます。それは教育制度の違いによるものかもしれません。

 

― マインドセットの違いとは具体的にはどのようなものでしょうか?

 失敗を恐れずに行動し、発言する姿勢が大切だと考えています。ある方が留学した際のエピソードですが、授業で「明日までに鳥の絵を描いてきなさい」という課題が出ました。日本人は時間をかけて一枚の緻密な鳥の絵を仕上げようとします。一方で、アメリカ人はまず100枚描いてみる。その多くは質が低いものですが、その中の一枚が、丁寧に描いた一枚を凌駕することもあるのです。

 「失敗しないこと」を重視する日本人と、「とにかく行動し、失敗から学び成功につなげる」アメリカ人。この違いを象徴するエピソードだと思います。そして、このマインドセットの差が、日本から世界的なスタートアップが生まれにくい現状にもつながっていると感じています。こうした考え方を育むためには、失敗を許容し、そこから学ぶ体験を積み重ねることが不可欠だと考えています。

 

海外留学はグローバルで活躍するための基盤となり得る。
より高いレベルの環境に身を置くことが成長につながる。

― 世界で競争力を発揮していく上で、日本社会にはどのような変化が必要でしょうか?

 挑戦を促すマインドセットを育み、柔軟な発想力を伸ばすように教育のスタイルを変えていく必要があるのではないかと考えています。失敗を恐れず、試行錯誤する文化を早い段階から醸成することが重要です。

 一方で、発想を転換し、日本人の強みを活かす戦略を模索することも不可欠だと思います。例えば、シアトルは都会でありながら頻繁に停電が起こり、冷蔵庫も旧式のままで30年間ほとんど進化していません。これは、利益を最大化するためには80%の完成度で止める方が合理的とされ、儲からない部分には力を入れないという考え方によるものです。これに対して、日本では停電はほとんどなく、冷蔵庫はチルド室など細部にまでこだわり、いわば「99%の完成度」を追求します。アメリカ人からすると「費用対効果が低く、利益に直結しない」と受け取られるかもしれませんが、私はこの「完璧を目指す姿勢」こそ日本の強みだと感じています。象徴的なのが日本食で、手間を惜しまないその姿勢は世界的に高く評価されています。このように、日本の「99%へのこだわり」を価値としてマネタイズする仕組みを構築することも、一つの有効な戦略だと思います。また、AIが80%から99%の完成度を追求する労力を簡素化してくれるのであれば、AIが一つのカギとなるかもしれません。

 

― 若者に対し、どのようなサポートが必要と考えますか?

 海外留学への支援は、今後ますます重要になると考えています。日本経済の成長や発展を支えるためには、優秀な人材が長期留学を通じて多様な経験を積むことが有効だと思います。海外で生活することで得られる学びは幅広く、異なる文化や価値観に触れ、「ここまで考え方が違うのか」と実感することは、グローバルで活躍するための基盤になります。

 特に若いうちに3~4年間海外で生活する経験は、現地の人々と対等に関わり、深い関係を築く力を養う上で大きな意味があります。世界の高い水準を肌で知ることができる点もメリットです。レベルの高い環境に身を置くことで、自分の基準が引き上げられ、成長の機会が増えるからです。

 

小さな挑戦でも飛び込み、やり遂げる経験を重ねてほしい。
人との出会いを大切にし、自らの力に変えていってほしい。

― 若者へのメッセージをお願いします。

 まず大切なのは、「自ら飛び込んでみること」だと思います。振り返れば、私自身もなぜイギリスにホームステイに行ったのか、その動機は曖昧でした。しかし、そうした小さなきっかけが、後に人生を大きく変えることがあります。

 先日、ニューヨークで開催されたイベントで「10年前の一つの変化が、今、世の中を大きく動かしている」という話を聞きました。これは、今何か変化を起こせば、10年後には大きな成果につながるということです。だからこそ、最初は小さなことでも構わない。何か一つでも挑戦し、やり切ってみる。その積み重ねが、未来を切り拓く力になると考えています。

 そしてもう一つ大切なのは、「人との出会い」です。「小才は縁に出合って縁に気づかず、中才は縁に気づいて縁を生かさず、大才は袖すり合った縁をも生かす」という言葉があります。人との出会いを大切にし、それらの出会いを自分の力に変えていくこと。それこそが、人生を豊かにする鍵だと思います。

 不確実性が高まる現代の世の中では、何に努力をして、どこに向かうべきなのかも予測しづらくなってきています。そんな世の中だからこそ、さまざまな人と出会い、刺激をもらい、小さいことでもいいので「まずはやってみる」の精神でさまざまなことに挑戦し、そこから学びを得ていくことが大事だと思います。

 私も頑張ります。一緒に明るい未来を創っていきましょう。

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