渡辺創太さんが語る世界への挑戦 ―「誰にでもできることを誰にでもできないぐらいやり抜く」【インタビュー】
本ページに掲載している内容は、2026年3月27日時点の情報です。
東京都は、令和7年度、新たな価値や課題解決を創造し、日本や世界の成長・発展を牽引していく人材を輩出することを目的に、第一線で活躍するグローバルリーダーへのインタビューを中心とした調査を実施しました。 本記事では、調査報告書の中から渡辺創太さんへのインタビュー内容をご紹介します。
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Startale Group 創業者 CEO 渡辺 創太
「Web3」と呼ばれる分散型の次世代インターネット技術領域において、日本発のブロックチェーンプラットフォームの構築に取り組む。2022年フォーブス誌のアジア版で「世界を変える30歳未満30人」に選出。日本ブロックチェーン協会理事。
全ての人々がWeb3の技術を当たり前に
享受できる世界を実現する。
― Startaleでは、どのような取組をされているのか教えてください。
私たちStartaleのミッションは、「世界をオンチェーン化(ブロックチェーン※1を使用している状態)することで次の文明を創る」ことです。
人類の歴史を振り返ると、最初のテクノロジーの一つは「火」だったと思います。火を使うことで人類は進化を遂げていき、やがて鉄、火薬兵器、鉄道など、さまざまな技術が生まれてきました。例えば、青銅器から鉄器に移行したことで道具の強度が向上し、生産性が向上しました。それにより余剰と人々の可処分時間が増え、世界各地で文明の勃興を促しました。人類の歴史の中で、技術が果たしてきた役割は非常に大きいと感じています。
そして今、ブロックチェーンは人々の暮らしを変える、歴史的なテクノロジーの一つになりえます。インターネットは「情報の民主化」を、AIは「知性の民主化」をもたらしました。ブロックチェーンは「価値の民主化」をもたらします。これまで、価値の中心は政府が発行・管理する通貨でした。しかし、ブロックチェーン上では、皆さんで管理する新しい形のお金が登場しています。これにより、デジタル空間における取引や信頼の在り方が大きく変わりつつあります。そこが、ブロックチェーンの素晴らしいところです。
私たちが取り組んでいるのは、Web3※2のインフラ作りです。例えば、皆さんがインターネットを使う際、その裏側でどんな技術が動いているかを意識することはあまりないと思います。それと同じように、Web3も意識せずに使えるようなプロトコルや基盤を作っています。さらに、株式や預金、アートなどをトークン※3化することで、スマートフォン1台あれば、世界中の誰もがあらゆる価値に24時間365日アクセスできる環境を作ろうとしています。これは、金融や文化の在り方を根本から変える可能性があると考えています。
※1 ブロックチェーン:暗号技術を用いて、取引や情報を時系列で記録・保管する分散型台帳。ネットワーク上の複数のノードによって検証・共有されるため、改ざんが困難。
※2 Web3:ブロックチェーン技術を基盤とし、ユーザーがデータや資産を所有・管理し、サービス運営にも関与できる次世代のインターネットの概念。企業が利用者のデータを集中管理する中央集権型のWeb2に対し、分散型を特徴とする次世代のWeb。
※3 トークン:ブロックチェーン上で発行される、資産や権利を表すデジタルデータ。
サッカーで培った「努力」と「リーダーシップ」。
日本一を目指すのではなく、世界を目指すことが重要。
― どのような子供でしたか?
幼少期からサッカーに打ち込んでいました。小学生の時には横浜市の選抜チームで背番号10を任されることもありました。ところが中学生になり、FC東京の下部組織に所属した際、周りがうますぎて初めて試合に出られず悔しい経験をしました。その経験から、居残り練習や走り込みを重ねました。そうした努力を監督が見ててくださり、中学2・3年生の時には継続的に試合に出場できるようになりました。この時、「努力は必ず報われる」という実感を得ることができました。監督からは「サッカーのセンスはないが、努力する才能は誰よりもある。人生においては後者の方が大事だ」と言われたことが、今でも心に残っています。努力することの大切さは、現在の自分の価値観に深く根付いています。
また、私は恩師に恵まれていました。元日本サッカー協会副会長であった高校時代の監督からは人生を学びました。「志を立て理想を追い続けなさい」という先生の教えは、今の自分の生き方や物事への向き合い方に大きな影響を与えてくださいました。
― 高校時代にサッカー部でキャプテンを務められていたとのことですが、リーダーシップの取り方はどのようなものでしたか?
背中で引っ張るタイプのリーダーシップを学びました。それは現在の仕事にも生きていて、自分が最も働いているという自信があります。常に仕事のことを考えていますし、逆にこれだけやってできないなら、それは自分の才能の限界だから仕方がないと思えるほどやっている自信があります。そのため、困難な判断や苦しい決断も下すことができます。自らの姿勢を示し、背中を見せて周囲を導くーそんなリーダー像を意識しています。
高校時代に学んだことに、「全国大会理論」というものがあります。私たちは全国大会への出場を目指していましたが、全国大会で優勝を目指していたチームとの間には大きな差がありました。その差は、プレーの一つひとつの精度や意識に表れていました。この経験から、日本一を目指すだけでは日本一にはなれない。世界一を目指すことが重要だと学びました。
「自分は人生で何をしたいのか」を考えてみることが重要。
読書から偉人の生き方を学び、後世に残る生き方を志す。
― どのような家庭で育ちましたか?
「文武両道」を重視する家庭でした。幼い頃から当たり前の習慣として勉強していました。一方で、親から「勉強しなさい」と強制されたことはなかったです。自主的に勉強していましたし、塾にも通わせてもらいました。
― 学生時代に特に体験しておくべきだと考えるものはありますか?
中高生は部活とかで野球やサッカーなどのスポーツに打ち込む方も多いと思います。私自身もそうでしたが、この時期はどうしても視野が狭くなりがちで、「野球一筋」「サッカー一筋」といった姿勢になりやすいものです。もちろん、一つのことに打ち込むことでしか得られない経験や価値もあり、それ自体は意義のあることだと思います。その中でも、少し視点を外に向けて、「自分は人生で何をしたいのか」「どのように生きていきたいのか」と、意識的に自分の将来や生き方について考えてみるのが重要だと思います。
― 人生観や価値観に影響を与えたものは何ですか?
大学生以降のメンターは本です。今でも本をよく読むのですが、特に影響を受けたのは、内村鑑三の『後世の最大遺物』です。人間が死ぬときに残すべき一番崇高なものは、お金でも地位や名誉でもなく、それは「生き方」だということを学びました。
歴史が好きな理由も、過去の偉人の「生き方」が学べるからかもしれません。吉田松陰や坂本龍馬について調べると胸が熱くなります。一番好きな偉人はユリウス・カエサルです。カエサルのように2000年以上経っても現代の若者たちをエンパワーしているのは本当にすごいと思います。私もそういう生き方をしたいと思っています。
大学受験の悔しさを原動力として、
主体的に学び続けながら行動し、自分の将来を切り拓く。
― 大学時代のモチベーションの源泉は何ですか?
大学は浪人して、東大を目指したものの失敗し、慶應大学に進学しました。当時は劣等感や悔しさがありました。でも、周りが4年間モラトリアムを楽しんでいる間に、自分も同じことをしていたら、彼らには一生勝てないと思いました。自分は今から努力してその先に行ってやろうと考えました。
しかし、自分が何をすべきか分からなかったので、原点を見つめ直そうと思い、父方の故郷である山口県を訪れました。そこで出会ったのが、長州藩の志士たち―吉田松陰のように、一地方にいながらも日本全体、さらにはその先を見据えていた先人たちの思想でした。そのスケールの大きさに強く惹かれ、彼らの生き方に深く感銘を受けました。
この経験を通じて、自分も「日本から世界を考えたい」と強く思いました。そこで、自分の視野を広げ、見識を深めるために、何度も海外を訪れ、世界に影響を与えるにはテクノロジーが不可欠だと気づくようになりました。
― 起業におけるモチベーションの源泉は何でしたか?
現在、社会に大きな影響を与えている人物を見渡すと、政治家を除けば、ほとんどがIT分野の起業家です。彼らはインターネット黎明期の20~30年前からこの領域に身を置き、行動してきました。私もこれから世界に影響を与えたいと考えたときに、今から既存のIT分野に挑戦しても、彼らには到底及ばないと感じました。そこで、30年後に社会の中核を担うであろう技術に目を向け、AIやブロックチェーンに注目しました。その中でも、技術的な興味や相性から、私はブロックチェーンの道を選びました。
― これまでの人生の中で、挫折や逆境体験はありましたか?
あまり挫折として捉えていません。失敗や挫折は視点によって意味が変わり、振り返れば貴重な経験になると感じています。大学受験の失敗も、進路や仲間との出会いにつながる転機でした。チャップリンの言葉のように、人生は短期で見ると悲劇だが、長い目で見れば喜劇である。そう捉える姿勢を大切にしています。
「当たり前」を問い直した海外経験。
誰でもできることを、誰にもできないくらいやる。
― 大学時代の海外経験について教えてください。
大学1年生の夏休み、NPO活動に参加するためインドに2か月ほど滞在しました。現地企業への営業やアポイント獲得のために街中を歩き回っていました。そこで最もカルチャーショックを受けたのは、裸足の子供たちに「お金ちょうだい」と声をかけられたことです。日本で道を歩いていて、「お金ちょうだい」と言われることってないですよね。世界の中で自分がいかに恵まれた環境にいるかを痛感しました。この経験から、これから自分が「社会に対して大きなインパクトを与えられるようになりたい」と思いました。
大学2年生の時は、サンフランシスコ州立大学への留学を通じてシリコンバレーに滞在しました。社会との接点を持ちながら実践的な経験を積みたいと考え、インターンシップというクラスを履修できる大学を選びました。インターン先は自分で探さなければならないため、ブロックチェーンに関する資料を100枚くらい作成し、100件くらいの企業にメールを送り、人脈を広げるために365日のうち約200日ミートアップに参加しました。その結果、幸運にも優れたスタートアップ企業と出会い、CEO・CMOの直下で実務を経験する機会を得ました。世界で活躍する人材の働き方に間近で触れられたことは、非常に貴重な経験となりました。
シリコンバレー滞在中、Googleで働くアメリカ人の友人から「ここでは一番優秀な人が起業し、次に優秀な人がスタートアップで働き、三番目が大企業に行く」と言われ、「君は絶対に起業すべきだ」と背中を押されました。その言葉に触れ、起業という生き方が現実的な選択肢として芽生えました。日本の大学生活では、横文字の企業に憧れる時期もありましたが、現地での経験を通じて「起業のハードルは思っていたほど高くない」と感じ、大学3年時に帰国後すぐ起業を決意しました。
― 行動力の秘訣について教えてください。
特別なことはありません。「誰でもできることを、誰にもできないくらいする」ことです。失うものは何もないと思ったので、あとはやるだけと思いました。
リーダーに大切なのは、人の心に火を灯せる「人間力」。
それは志を掲げ、他者に寄り添い、学び続ける姿勢に宿る。
― グローバルリーダーに必要な能力・スキルは何だとお考えですか?
「人間力」です。企業のリーダーとしては、「自分より優秀な人材を雇い続ける」ことが求められます。英語力、数学力、プログラミング力など、各分野で自分以上の能力を持つ人材を集める必要があります。そして、彼らが「私と働きたい」と思ってくれるかどうかが、何よりも重要です。
そのために必要なのが「人間力」だと考えています。私自身にそれがあるとは言いませんが、さまざまな経営者の方々と接する中で、人間力の高い方々が本当に多いと感じます。特に成功している方々や上場企業の経営者には、その傾向が顕著です。私自身の「人間力」の定義は、「人の心に火を灯せる力」。そのためには、まず「自分自身が何を成し遂げたいのか」という旗を明確に掲げる必要があります。そして、相手のことを理解し、一人ひとりに合わせて対応することも必要です。
現在、当社には15か国ほどのメンバーが在籍しています。コミュニケーションに当たっては、歴史や哲学、宗教、文化的背景を考慮します。例えば、アメリカ人にははっきりと伝えますし、ヨーロッパの方々だったら文化を尊重します。また、カトリック圏のメンバーにはキリスト教の文脈で話し、中華圏の人には中国史を引用し、アメリカ人には米国史やリーダーシップ論を用います。こうした教養の引き出しの多さも大切だと思います。
― 「人間力」を育むためには、どのような取組が必要ですか?
最近、合気道を少し始めました。ビジネスの世界では自分の得意分野で勝負している一方、合気道では白帯からのスタートです。帯の結び方すら分からず、投げられる立場になるという環境が、新鮮で心地よく感じられます。
こうした「ゼロから始める感覚」を大切にしています。得意な領域にいると、つい自分を過信してしまいがちです。だからこそ、常に初心者として新しい世界に飛び込むことが、「人間力」を育む上で不可欠だと考えています。
未来を切り拓く鍵は、次世代の責任と行動。
ロールモデルの存在が、次の挑戦者を生む連鎖をつくる。
― 渡辺さんから見て、日本の若者はどのように見えていますか?
戦後、日本は著しい経済成長を遂げ、トヨタやソニーといった世界的企業が生まれました。日本人が海外に行くと一定の敬意を得られるのは、先人たちが築いてきた信頼と実績によるものだと感じています。
しかし現在、日本の国力は相対的に低下しています。自動車やエンタメに続く新たな基幹産業を生み出せていません。今の若い世代が享受している「当たり前の日本」は、上の世代が作り上げたもので、そのことへの自覚が、社会全体として希薄なのではないかと感じています。
現実には、20年後・30年後の日本がどうなっているかは分かりません。だからこそ、次の世代が新たなビジョンを掲げ、日本の経済や産業を再構築していく必要があります。この国が沈まないためにも、私たちはその危機感をもっと強く持つべきだし、視座をもっと高めるべきだと思います。
とはいえ、若者に「日本を背負って世界で活躍しろ」と言っても、成功事例やロールモデルが少ない中では現実的に難しい面もあります。スポーツ界では、サッカー日本代表や大谷翔平選手のように、海外で活躍する姿が当たり前になりつつあります。ビジネス界でも、そうしたグローバルな成功が「普通」になるのが理想です。若者の誰か一人が世界で活躍すれば、後に続く人が現れる。私もその先陣を切る役割を担いたいと考えています。
「自分はどう生きたいのか」を考える経験が重要。
海外経験は自らの水準を高め、意識や行動変容につながる。
― 若者に対し、どのようなサポートが必要と考えますか?
なるべく人生の早い段階で「自分はどう生きたいのか」を考える経験が大事だと思います。そのきっかけとして、海外経験はとても重要です。日本の良さも課題も、海外に出て初めて見えてくることが多いと感じます。加えて、私は海外経験を通じて、周囲の同調圧力に流されにくくなったように感じます。
また、環境が習慣をつくり、習慣が人格をつくるため、「当たり前の水準を上げ続ける環境」を提供することが大事です。そのためにも、若い世代が外の世界に触れる機会をもっと積極的に提供してもよいのではないでしょうか。IT起業家であればアメリカに送り出すサポートをしてあげてもよいと思います。世界を知ることで、自分の基準値がぐっと上がります。
お寿司で例えるなら、チェーン店ばかり食べているとそれが基準になりますが、「世界一」と称されるお寿司を食べると、味覚の物差しが一変します。ITで言えば、シリコンバレーのトップ層と接したときも同じで、彼らの日常のレベル感に触れることで、自分の意識や行動も自然と変わっていきました。
― ご自身の経験を踏まえ、海外でのインターンシップの教育的効果や有用性についてはどう考えますか?
環境が人を育てるため、自分の環境をどこに置くのかは重要です。若いうちにできる限り、「自分が最底辺の環境」「世界トップレベルの環境」「やらざるを得ない環境」に身を置くべきと考えます。私にとって、海外でのインターンシップがまさにその環境でした。
その上で、同じ経験でも、成果は人によって異なります。2週間のインターンシップで人が変わることもあれば、1年行っても何も変わらない人もいます。違いを生むのは「なぜやるのか」という目的意識です。Howばかりに目を向けると、学びは浅くなります。今、若者たちに一番足りていないのは、Whyを確立する教育ではないかと感じます。
未来を変える力は、挑戦する若者の手の中にある。
テクノロジーを武器に世界に羽ばたいてほしい。
― 若者へのメッセージをお願いします。
今の若い世代─30代・20代・10代は、日本にとって、そして人類の歴史にとっても大きな転換点に立っていると感じています。今後、国力の伸びを楽観視する声は少なく、むしろ衰退の予測が主流です。こうした中で、全員が起業家になる必要はなく、多様な人がそれぞれの可能性を追求することが重要だと思います。「明日の日本」「明日の世界」が今日より良くなると信じたいし、そうしていきたいと思います。その未来を担うのは、私も含めて今の若い世代です。
テクノロジーの力は圧倒的で、今やパソコン1台でAIを使い、個人でも企業やプロダクトを生み出せる時代です。AIをはじめ、インターネットやブロックチェーンなどのテクノロジーに若いうちから触れることは、大きなアドバンテージになります。政治・経済・生活のすべてにテクノロジーが深く関わっており、もはや避けて通れません。
だからこそ、どの技術が社会にとって重要なのかを考え、分からなければ人に聞き、まずは飛び込んでみることが大切です。逆境や悔しさ、差別などもあるかもしれませんが、振り返れば「あの経験があって良かった」と思えるはずです。「こう思われたら嫌だな」とか、「馬鹿にされたくないな」とか、小さなプライドは捨てて、ぜひ世界に挑戦してほしいと思います。
私も努力を続けます。皆さんが社会人になる頃、私が経済の中心で活躍できるよう、日々真剣に取り組んでいきます。「誰でもできることを、誰にもできないほどやり抜けば、道は拓ける」はずです。私にそれができれば、多くの皆さんにもできるはずです。「こういう人もいたな」と思っていただきながら、皆さんにも日々の生活を前向きに頑張ってほしいと願っています。