株式会社ファーストリテイリング ―自分の可能性を信じ、より高い視点を持ってほしい【ヒアリング】

 本ページに掲載している内容は、2026年3月27日時点の情報です。

 東京都は、令和7年度、新たな価値や課題解決を創造し、日本や世界の成長・発展を牽引していく人材を輩出することを目的に、第一線で活躍するグローバルリーダーへのインタビューを中心とした調査を実施しました。 本記事では、調査報告書の中から株式会社ファーストリテイリングを対象としたヒアリング内容をご紹介します。

INTERVIEW
株式会社ファーストリテイリング
人事部 新卒採用チーム 加藤 弘樹

 

株式会社ファーストリテイリングのロゴマーク

 

人事部新卒採用チーム加藤弘樹さん

 
 

OVERVIEW

業種

小売業

本社所在地

山口県山口市

創業年/設立年

1963年

事業内容

ユニクロ、ジーユー、セオリーなどのブランドを世界中で展開。中核となるユニクロ事業では、素材調達から企画、生産、販売までの一貫したプロセスにより、高品質な素材や機能性素材を使った独自の商品を、あらゆる人が手に取りやすい価格で販売。

企業規模

109,990名 ※2025年8月末時点

平均年齢

38.4歳 ※2025年8月末時点、ファーストリテイリング単体

グループ店舗数

日本を含む世界26の国・地域で3,570店舗を展開 ※2025年8月末現在

 

「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」
当社は、世界水準の働き方で挑戦し続けていく。

貴社の事業概要や理念についてお聞かせください。

 当社は「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」という理念のもと、ユニクロやジーユーをはじめとするブランドを通じて、衣料品の企画・生産・販売を一貫して行っています。

 服は生活において「当たり前に存在するもの」であり、その力を意識することは少ないかもしれません。しかし、24時間365日身に着けるものである以上、社会をより良く変える大きな可能性を秘めていると考えています。
一方で、衣料産業全体としては、過剰消費や環境負荷といった課題を抱えており、こうした状況を踏まえ、社会的責任を果たすことが求められる業界でもあります。

 当社は創業以来、服の可能性と業界の課題に真摯に向き合い、変革を重ねてきました。これからも服を通じて常識を変え、世界をより良い方向へ変えていくことを目指していきます。

 

― 理念を実現するために、貴社が大切にしている姿勢について教えてください。

 この理念を実現するために、当社は「全員経営」と「グローバルワン」という二つの経営姿勢を掲げています。

 「全員経営」とは、すべての社員が経営者意識を持ち、自ら考え、主体的に行動し、価値を創出する姿勢を指します。お客様に最も近い存在は店舗で働く現場の従業員であり、全員が同じ理念と指針を共有し、現場から経営を動かす組織でなければ、目指す変革は実現できません。現場・現物・現実に基づいて課題を発見し、解決することが重要です。

 「グローバルワン」とは、お客様と社会にとって正しいことを追求し、それを世界で一番良い方法で実践していくという考え方です。私たちの競争相手は他の企業ではなく、「世界で一番良い方法を実践できているか」という問いそのものです。その問いに真摯に向き合いながら、常に世界水準を上回る働き方を目指し、挑戦を続けています。

 

求める人材像は「商売人」。
顧客満足のために挑戦し、最後までやり切る姿勢が必要。

貴社が求める人材像についてお聞かせください。

 当社においては、人材の志向を「安定/挑戦」と「顧客満足/自己成長」という二つの軸で捉えています。その中で、顧客満足のために挑戦し、最後までやり切る人材を「商売人」と位置づけています。採用においても、入社後の育成においても、私たちが最も重視しているのは、この「商売人」としての姿勢です。

横軸を「安定/挑戦」、縦軸を「顧客満足/自己成長」とした図

 しかし、実際に採用活動を通じて学生を見ていると、「商売人」と呼べる層はごく少数にとどまっており、年々減少している印象があります。対照的に、自己成長のために努力する「アスリート」タイプの人材は増えてきていると感じています。当社が特に求めているのは「商売人」タイプの人材です。

 顧客満足のために挑戦し、やり切る姿勢は日本の強みでもあります。当社に限らず、日本企業全体が世界で存在感を示していくためにも、「商売人」のような人材が増えてほしいと考えています。

 

創業者である柳井社長の「商売人」としての一面が分かるエピソードを教えてください。

 社長の柳井は、まさに「商売人」だと感じます。家業を継いだ当初、自ら店舗のシャッターを上げ下ろし、接客からレジ打ち、掃除、現金管理まで、すべて一人で取り組んでいました。商売の全体を一人ひとりが理解することの大切さは、今も社員によく語っており、「全員経営」という理念にも通じます。

 

多様な人材に共通して求められる力、
ファーストリテイリングの「3+1(スリープラスワン)」。

― 社員に共通して求める能力・スキルについてお聞かせください。

 当社では、幅広い人材の採用と育成に力を入れています。経営を担う人材や、特定分野で高度な専門性を発揮する人材など、一見すると求められる力は異なるように見えます。しかし、実は共通して大切にしている要素があります。これを当社では「3+1(スリープラスワン)」と呼んでいます。

 「3+1」とは、達成志向・思考力・対人能力という三つの力に加え、ファーストリテイリングの文化への適合性を示しています。

 まず達成志向ですが、これは高い目標を掲げ、最後までやり切る力です。学生の方と面接していると、同じアルバイトやサークル経験でも、何を目指して取り組んだのかは大きく異なります。私たちが重視するのは、設定した目標の高さ、その目標に向けてどれだけ行動したか、成果が出ない状況でも粘り強く挑戦し続けたかどうかです。高い目標ほど容易には達成できないため、失敗しても挑み続けられる姿勢を見ています。

 次に思考力ですが、これは適切な課題を設定し、解決をリードする力です。論理的に考えることは基本ですが、それに加えて、自ら問いを立てて深く掘り下げられるか、そしてスピード感を持って考えられるかが重要です。結論が一か月後にようやく出るようでは、当社のビジネスの場では間に合いません。限られた時間の中で仮説を立て、迅速に答えを導き出せるか。そのような思考力を重視しています。

 最後に対人能力ですが、価値観の異なる人々をどのようにまとめ、リードできるかを見ています。理想的なのは、実際に多様な価値観に触れ、その中で葛藤や困難を経験し、多様性の必要性や人をまとめる難しさを理解していることです。ただし、必ずしもそのような経験があることを条件としているわけではありません。直接的な経験がなくとも、多様性への理解が自らの成長や社会全体にとって重要であると認識しているかどうかを重視しています。

 

「海外に行った」よりも「海外で何を学んだ」か。
重要なのは、多様な価値観に触れた際の壁や難しさをどう理解したか。

― 学生の海外経験についてどのようにお考えですか?

 海外経験そのものをアドバンテージとして評価することはありません。重要なのは、海外で多様な価値観に触れる中で壁や難しさをどう感じ、どう理解したのかという点です。そうした経験を自分なりに理解し、整理できている学生に対しては、「当社と相性が良さそうだ」と期待を持ちます。

 近年は留学を経験する学生も増えていますが、その目的は二極化していると感じています。一つは、海外での経験を通じて多様性への理解に行き着くタイプ。もう一つは、「英語を使って働きたい」「何年で海外勤務に行けますか」といったように、世界に出ること自体を目的化するタイプです。後者が悪いわけではありませんが、私たちが求めている人材は前者です。なぜなら、海外で多国籍のメンバーをまとめる苦労と、当社の店舗でアルバイトやパート、10代から60代まで幅広いメンバーをまとめる苦労には、本質的な違いがないからです。

 

― その他、学生を採用する際に注目している要素はありますか?

 当社の面接では、「自分で意志を持って取り組んだことは」とお聞きしています。

 ここで見ているのは、「どれだけ主体的に自分の人生を選んできたか」という点です。部活動やアルバイトなどでも、周囲に合わせてなんとなく選んだのか、自分の意思で選び取ってきたのか、その違いは大きいと考えています。たとえ休学など一般的なレールを外れた経歴であっても、それが自分の「意志」に基づくものであれば全く問題ありません。むしろ、「この勉強がしたくて浪人した」「その選択が今につながっている」といった、自らの判断で道を切り拓いてきた経験を高く評価しています。

 

人材育成の鍵は、「直接経験」と「抜擢」を通じて、
自ら考え意思決定する姿勢にある。

― 人材育成に当たり、なぜ「直接経験」を重視されているのですか?

 私たちは最終的に頼りになるのは、自分自身が積み重ねた「直接経験」であると考えています。知識は書籍や研修で学ぶことができますが、意思決定の場面で本当に支えとなるのは、自らの身体を通して得た経験です。

 その意味で、店舗は直接経験を積む上で最適な環境だと考えています。お客様と真剣に向き合い、多様な価値観を持つ従業員をまとめながらマネジメントを実践し、日々の運営を通じて経営の基本を体感できるからです。そこで積み重ねる成功や失敗の一つひとつが、将来経営を担うための視座や判断力につながっていきます。

 

― 人材育成に当たり、なぜ「抜擢」を大切にされているのですか?

 当社では、早い段階から大きな役割を任せる「抜擢」文化があります。人はどうしても自分のできる範囲で物事を処理しようとしますし、小手先で何とかなる環境では、小手先で済ませてしまうこともあります。だからこそ、あえて大きな役割を若いうちから任せ、挑戦の中で自分の未熟さや成長の余白を実感してもらうことを大切にしています。

 入社2年目から海外勤務の機会を提供しているのも、その考え方の延長で、キャリアのどこかで必ず海外経験を積んでもらうことを目標にしています。海外を経験した社員は視点や基準が大きく変わり、国内業務に戻ってからも非常に強い人材へと成長しています。

 

― 貴社の中で成長していく人はどのような人ですか?

 指示を待つのではなく、自分で考え、自分で意思決定できる人だと思います。当社では上司を忖度して作られた資料は評価されません。常にお客様の方向を向き、自分の頭で考えることが求められます。この姿勢を貫ける人こそ、当社で大きく成長し、活躍できると考えています。

 

グローバルリーダーは、「自己理解」を基盤に理想を掲げ、
変革を導き、仲間と協働して事業を成す人材。

― 貴社では社員にどのようなリーダー像を求めていますか?

 当社では、リーダー像を四つの観点で定義しています。

 第一に「理想を追求する力」です。リーダーにはマネジメントなど多様な役割がありますが、大きな理想を掲げることができなければ務まりません。これは四つの中で最も重視していることです。

 第二に「変革する力」です。理想と現実の間には必ずギャップが生じます。その差を埋めるべく、変革を主導できる力が求められます。

 第三に「チームをつくる力」です。どれほど優秀であっても、一人で大きな成果を上げることはできません。周囲を巻き込み、共に前へ進む仲間を増やしていける力を重視しています。

 そして第四が「儲ける力」です。お客様に喜んでいただき、その価値を事業として成立させ、従業員に給料を支払うところまでを実現する力を指します。

 

― 柳井社長が語るグローバルリーダー像について教えてください。

 柳井は「グローバルリーダーになる上で最も重要なのは自己理解だ」と常に語っています。「自分が何に価値を置き、何に面白みを感じ、どの分野で力を発揮できる人間なのかを深く理解した上で、その道を全力で歩んでほしい」と述べています。

 

― 将来の経営人材にはどのような力を求めていますか?

 将来の経営人材の候補となるには、まず「商売人」として現場で成果を出していることが絶対条件です。売上や利益をつくり、人を育てる。この二つが揃って初めて成果と考えています。

 さらに、候補として選抜される人には必ず「強み」があります。周囲を巻き込む力に優れた人など、何かに尖った力を持つ人材が集まり、その中から次の経営層が育っていくというイメージです。

 

柳井社長の人生哲学「一勝九敗」。
挑戦と失敗の繰り返しが人を成長させる。

― 柳井社長は、失敗を恐れず挑戦する姿勢を重視されていると伺いましたが、その点についてはいかがでしょうか?

 柳井は「一勝九敗」という言葉で、失敗を恐れず挑戦し続けることの重要性を語っています。その考え方のもと、当社では「人は失敗から成長する」という価値観を人材育成の前提としています。完全実力主義を掲げる一方、失敗しても再挑戦できる仕組みを整えているのです。

 例えば、初期のアメリカやロンドンへの海外展開では、現地市場の理解不足から多くの店舗を閉じる苦い経験をしましたが、それを踏まえた改善を重ね、グローバル展開を進めました。現在では世界3位のアパレルブランドとして成長しており、世界ナンバーワンに向けて挑戦を続けています。

 こうした「失敗から学び、また挑戦する」文化が当社の根底にあります。

 

― 貴社では社員に限らず、若者や学生にも挑戦の機会を提供されて いると伺いましたが、その取組の背景や狙いについてお聞かせください。

 当社では社員だけでなく、大学生など未来を担う若い世代への投資として、「GLOBAL STUDY PROGRAM」を実施しています。海外に実際に足を運び、現地のビジネスを体感しながら、自分が世界でどんな可能性を持てるのかを考えるためのプログラムです。採用とは完全に切り離し、意志を持つ学生に広く門戸を開いています。

 この取組の背景には、「日本は資源が乏しく、人材の力で未来を切り拓くしかない」という柳井の強い危機感があります。だからこそ、ファーストリテイリングとしても、若い世代に挑戦の場を提供し続けたいと考えています。

 

学校ではリーダーになれるチャンスが足りていない。
もっと実践の場でリーダーシップを育む機会を。

― 若者に対し、どのようなサポートが必要だと考えますか?

 採用活動を通じて強く感じているのは、学生がリーダーシップを発揮する経験に乏しいという点です。

 東京都内の公立小学校を例にとると、1クラスに約40名、学年全体で4クラスという環境です。当然、クラスでリーダーを務められるのは限られた人数です。部活動でも、50人の部員がいる中でリーダーは1人です。多くの子供にとって、リーダーを経験する機会が乏しいのが実情です。

 リーダーシップとは肩書によって与えられるものではなく、挑戦や試行錯誤、失敗を通じて学びながら育っていく力です。だからこそ、若いうちに「リーダーを務めたことで自分はこう変わった」という実感を得ることが極めて重要だと考えています。しかし、現状の教育環境においては、その機会が不足していると感じています。

 こうした中、若者が自分の可能性に気づき、成長できる場への参加を後押ししたり、そうした環境を整備したりすることは有用だと思っています。近年は高校生向けのビジネスコンテストなど、社会全体で受け皿が広がりつつあります。こうした場に学生が参加しやすくなるよう仕組みを整えていくことが重要です。一方で、海外でチームを率いたり、ビジネスの現場で意思決定を担ったりするような環境は、容易には得られません。そうした実践の場については、東京都のような自治体が仲介し、挑戦できる仕組みを提供することに大きな意義があると考えています。

 実践の場に触れた経験は、大学進学や就職の際に必ず自信につながり、将来のキャリアを大きく広げます。若い世代の可能性は非常に大きいからこそ、それを伸ばす環境を社会全体で整えていく必要があると考えています。

 

若者は「自分への期待値」を上げてほしい。
自分の可能性を信じて行動できる人が増えることを期待。

― 若者について、課題や不足していると感じる点はありますか?

 若い世代を見ていて強く感じるのは、「自分の可能性に対する期待値が低いのではないか」という点です。全体として「このくらいで十分だろう」という意識が根付いているように見えます。

 当社は将来的にグローバルで経営を担える人材を求めています。しかし、採用活動で出会う優秀な学生からは、「何年で管理職になれますか」「もし管理職になれなかったらどうなりますか」といった質問が寄せられることがあります。そうした場面に触れるたび、もう少し自分の可能性を信じ、より高い視点を持ってほしいと感じています。

 

― 若者に期待することやメッセージをお願いします。

 ぜひ、自分の可能性に期待してほしいと思います。誰もが世界をリードする存在になるポテンシャルを持っているはずです。差が生まれるのは、才能そのものではなく、自分の可能性を信じ、努力を重ねてきたかどうかだと考えています。

 自分の可能性を信じて行動できる人が、東京都、そして日本全体で増えていくことを心から期待しています。

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